目次
駄菓子屋の前、いつもの夏
「駄菓子」と書かれた布看板の向こうで、
ビー玉がカツンと鳴る。
あの午後、あの空気。
静けさの中に、夏の音が溶けていた。
声に出さなかった「なにしてるの?」
女の子はただ立っている。
後ろ手に手を組み、
ちょっと迷って、ちょっと照れて。
その一歩が踏み出せなかった。
ただ、それだけの午後。
忘れられないのは、なにも起こらなかったこと
声をかけなかった。
仲間に入らなかった。
でも、不思議と記憶に残ってるのは、
あのときの光、風、影……
そして、小さな“もしも”の余白。
結びのことのは
あの夏の午後は、
ほんの少しの勇気を出せなかった記憶。
でも今なら、あの子に言えるかもしれない。
「一緒にやろう」って。
あわせて読みたい


だがしやのまえで、声をかけられなかった日
夕暮れ、駄菓子屋のまえ オレンジに染まった空の下。木造のだがしやには、ビニールに包まれたお菓子がきっちりと並んでいる。男の子たちは夢中で地面に円を描き、遊びに...
コメント