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遠くの風鈴が、時間を巻き戻す
姉は、うちわを仰ぎながら、ふと風鈴を見上げた。
妹は、蚊取り線香の煙を見つめていた。ふたりのまわりに、静かな午後が流れていたけれど、
どこかで“懐かしい声”がした気がした。
ことばじゃない、でも届いてた
鳴ったのは風鈴だったのか、それとも思い出だったのか。
どこか遠くから、届いた声がした。まだ名前もついていない想いが、そっと風に乗っていた。
記憶のフィルムを、ひとコマだけ
ことのはさんの“90年代の午後”は、
まるでVHSの映像みたいに、少しザラついててあたたかい。あの日の風の音も、金魚の動きも、ちゃんと焼きついている。
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