声にしない手紙

声にしない手紙
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縁側の午後、ことばの代わりに

夏の午後。縁側に座った姉は、うちわで風をつくっていた。
妹は黙って、その音を聴いていた。

風鈴の音が、ふたりの間に揺れる。
まるで、何かの“返事”みたいに。


話さなくても、届けられること

「さっき届いた手紙、まだ返事を書いてない」
そんな空気が、ふたりの間にあった。

でも、金魚がゆらいで、簾が揺れて、
声じゃないものが、返事をしていた。


言わないからこそ、残るもの

ことのはさんの世界には、
ことばにならない手紙がある。

風と光と、少しの沈黙。
それはときどき、いちばん心に届く返信かもしれない。

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